2015年7月29日水曜日
『やさしさ反射神経』を育てよう。
これまで、体や心を幸せにするやり方を見てきました。
これらは、私(1人の人間)を幸せにする方法です。
しかし実は、幸せになる方法は、他にもあるのです。
しかもそれは、自分だけでなく、相手も幸せにする方法です。
やさしさ反射神経
わたしは「やさしさ反射神経」があると、つねづね思っています。
たとえば「あの人、困ってる。助けてあげたい」と思っても、
妙な照れにジャマされることがありませんか。
サッと動きたかったのに、タイミングを失ってしまうことがあります。
わたし自身、相手を助けたいと思ったときに、サッと動ける反射神経を
育てたいなあと、いつも思います。
心がけることが第一歩ですよね。
やさしさを与えることで、わたしたちの人生は何倍も幸せになります。
わたしが実際に出会ったやさしさ反射神経の話をしましょう。
* * * * *
テレビ朝日の取材で、千葉県の館山というところに行った時のことです。
あるお寺を取材した後、撮影スタッフの方に、駅まで送ってもらいました。
そこはとても田舎で、九重駅というところです。
早めに送っていただいたのですが、乗る予定の電車が来るまで、
まだ1時間もありました。
駅には待合室もなく、まわりにカフェもコンビニすらもありません。
おまけに、風がつめたくて、寒い日でした。
これは困ったなあ、このまま立っていると風邪をひいてしまうなあ、と思い、
途方にくれていると、電車が走ってくる音が聞こえてきました。
あまりにも早く駅についたので、わたしが乗る予定だった電車の、
1本前の電車が来たようでした。
しかし、わたしはホームを間違えていて、反対側のホームに立っていました。
あの電車に乗れたら、寒い中を待たなくてもいいんだけどなあ、と思いながらも、
田舎の駅のことで、ホームをうつるには、少しはなれた踏み切りまで行って、
渡らないといけないのです。
僧侶すがたで、大きなカバンを2つ持っていたわたしは、
とても間に合わないなあ、と思い、立ちつくしていました。
そのときです。
うしろの方から、パタパタと軽やかな足音が聞こえてきました。
かわいい声で、
「いそいで、いそいで。間に合うから。」
と言っているのが聞こえます。
ふり向いて見ると、小学校2・3年生くらいの男の子と女の子が、
息をはずませて走ってきました。
わたしの顔を見るなり、男の子が、
「どうしたんですか? あの電車に乗るんですか?
まだ間に合いますよ。ぼく、手伝います。」
と言うと、あっという間にわたしの黒いカバンを持って、
「こっちです」
と言いながら、走り出したのでした。
夢のような展開におどろきながら、わたしは2人につづきました。
子どもたちは、
「この電車、ゆっくり止まるから、大丈夫なんです。
わたしたち、毎日乗ってるから、わかります。」
といって、わたしを導いてくれて、電車に乗ると、
「ここに座りましょう」
と、向かい合わせの4人席に、いっしょに座ってくれました。
とてもかわいらしい2人で、一生懸命、交互に、かわいらしく話してくれます。
わたしが、話を聞きながら、寒そうに手のひらをこすっていると、
男の子はポケットから小さなカイロを取り出して
「どうぞ、これ、使ってください」
といいました。
わたしは、2人があんまりにもかわいくて優しいので、すでに涙目でした。
たった1駅でしたが、いっしょに降りて、
2人はわたしを乗り換えの場所までつれていってくれました。
そして、わたしがもう大丈夫なのを確認したあと、
何事もなかったように、特別なことなどしなかったかのように、
手をふって、走り去っていきました。
わたしには、この2人が、とても幸せで輝いているように見えました。
その日は忘れられない一日となりました。
この子たちは、まさに、わたしの先生だなあ、と思いました。
パッとわたしを見ただけで、「この人は困っている」と感じて、
ものすごい身軽さでわたしのカバンをもって、走り出したのです。
すごい「やさしさ反射神経」だなあ、と思いました。
* * * * *
このお話は、とても分かりやすい例だと思います。
誰かを助けたり、他の人を幸せにすることは、
そのまま、自分の心を豊かにしたり、安定させたりする効果があります。
みなさんも、道に迷っている人に行き方を教えたり、
匿名で募金をしたり、
電車でご老人に席をゆずったりしたことがあると思います。
そうやって自分のやったことで、相手を助けることができて、
とてもさわやかな気分になったのではないでしょうか。
わたしも、相手を助けたり楽しませたりすることが、大好きです。
家では毎日、どうやって娘たちを笑わせようか、と考えています。
相手と関わりをもつことで、こちらも幸せになれる。
しかもその幸せは、自分一人では得られない幸せです。
つまり家族やお友達、社会のみんながいるおかげで、
私たち一人ひとりが、さらに幸せになることができるのです。
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