少年シッダールタの鋭い感受性は、
小さなことから、世の残酷さを見抜くことになります。
王子が少年だった頃の話です。
ある日、シッダールタの国で農耕祭が行なわれました。
農産物の豊作を願うため、催されたお祭りです。
シッダールタの前で、農民が畑を耕していました。
農民がくわで土を掘り起こすと、虫が出てきました。
するとすぐ、小鳥が飛んできて、その虫を捕まえて食べてしまいました。
さらに上から、大きなワシがその小鳥を狙って、襲いかかっていったのです。
それを見たシッダールタは、憂鬱な気持ちになりました。
「なぜ、生きものは殺し合わないといけないのだろうか」
殺し合わないといけないという言葉は、
現代の私たちにとって、ピンと来ないかもしれませんね。
しかし、毎日食べている物を、思い浮かべてみてください。
お米、味噌汁、肉、魚、野菜。
日々の食事の中に、たくさんの命があることに気がつくでしょうか。
食材はスーパーで買えます。
けれども自分自身では、牛や豚を殺して解体したりはしません。
誰か他の人が、私のために動物を絶命させ、切り分けてくれているわけです。
お米や野菜が育つにも、多くの虫が殺虫剤などで死んでいるのです。
事実として、私たちは他の命をとることで、生きています。
虫、鳥、ワシの命の奪い合いを見たシッダールタは、
そこに生命の残酷さを発見して、
大きな憂いを感じたのでした。
そして、またある日、お城の門を出たシッダールタは、
見たことがないものを目にすることになります。
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